五木ひろしは完成形でなく、現在進行形?
先週だったか、いや先々週だったか。浜町の明治座の前を通ったとき、ポスターというのか看板というのか、宣伝ビジュアルが目にとまり、スマートフォンで撮影した。
それは、五木ひろし芸能生活50周年記念公演「歌舞奏スペシャル」と題されたもの。歌舞奏というのは、歌舞伎と演奏を組み合わせた言葉なのだろうか。なんとなく新しい感じがする。
が、その言葉以上に、なんといってもビジュアルがすごい。五木ひろしがピースをしていたり、かわいい犬たちと戯れていたりする。そのどれもが、インスタグラム風というのか、ほぼ正方形の画面サイズにトリミングされている。ソファに座り、3匹の犬とともに写っている写真は、足元が靴でなく、ソックスのままではないか。
もちろん、室内をイメージしているようなビジュアルにおいて、靴を履かずに靴下のままで映っていることは不自然でないように思えるが、なぜか気になる。背景がホリゾントといっていいのか、いかにも、スタジオ撮影のため、靴下が気になったのかもしれない。
このビジュアルにおいて、床にカーペットが敷かれていたり、またカーペットの上でスリッパを履いて写っていたら、それほど気にならなかったのかもしれない。
その「気になり方」も含め、すべてが計算されたものだったとしたら。そう考えたとたん、芸能生活50周年を迎える大ベテランでありながら、見ようによっては「アート」にも思え(そうは思えないだろうか)、インスタグラム風のニコパチ写真に臆面もなく収まることができる五木ひろしに、「果てしない柔軟さ」と「突き抜けたアヴァンギャルドさ」を感じ、おそろしくなった(末恐ろしいとはいわないか、この場合)。
これだけの芸歴を持ちながら、まだ新たな可能性を秘めているというか、その底知れぬ魅力というのか、次にまた何か新境地を見せてくれそうな、そんな凄みを感じた。