龍虎さんに京都で遭遇した日

 
 京都で過ごした学生時代のこと。あれは堀川通りだっただろうか、スクーターに乗って南へ向かおうとしていたら、突然だれかが飛び出してきて、通りを走って渡った。その男の人までは数十メートルあり、急ブレーキをかけるほどの距離ではなかったが、かなり近づいて、それが龍虎さんであるのを確認した。スクーターで走りながら確認できたくらいだくらいだから、元小結の龍虎さんは普通の人よりも大柄で特徴があり、それに当時、テレビで何度もお目にかかっていたのだろう。
 
 その後、「あんな、さっき龍虎、轢(ひ)きそうになってん」と何人かの友達に言ったような気がする。接触するほどの至近距離ではなかったが、少しオーバーに話を伝えてしまうのは、関西人特有の癖というか、サービス精神のようなものだろう(人ごとのようにでなく、自分ごとのように語るというか)。
 
 松平健さん主演の人気テレビ時代劇『暴れん坊将軍』にレギュラー出演されていた頃だったと思う。太秦の映画村で撮影があり、京都にいたのだろう。当時、「龍虎を見た」「龍虎が歩いてた」「龍虎が食べてた」といった話を何度か耳にした記憶がある。
 
 堀川通りで遭遇した龍虎さんは『暴れん坊将軍』に出ていたような着物だったか(そのままの衣装ということはないだろうが)、浴衣だったか、とにかく和風の装いをしていた気がする。龍虎さんを直接お見かけしたのはその一度だけだが、訃報を知り、残念に思う。合掌。
 
 
 

Yasu
  • Yasu
  • デザイナーを経て、クリエイティブディレクター、コピーライター、ライターに。「ベースボール」代表。広告&Web企画・制作、インタビュー構成をはじめ『深川福々』で4コマ漫画「鬼平太生半可帳」連載中。書籍企画・編集協力に『年がら年中長嶋茂雄』など。ラフスケッチ、サムネイル作成、撮影も。