天上の音楽、仏の響き
2016-12-06
仕事の合間にちょっとずつ読んでいるのだが、『小澤征爾さんと、音楽について話をする』(小澤征爾 x 村上春樹、新潮文庫)にこんな記述がある。本当に最初のほうの「始めに—-小澤征爾さんと過ごした午後のひととき」という序章(といってよさそうな部分)のなか、村上春樹さんの筆による文章だ。
僕は素人だけれど(素人だからこそというべきか)、音楽を聴くときは無心に耳を澄ませ、その音楽の素晴らしい部分をただ素直に聴き取り、身体(からだ)に取り入れようとする。素晴らしい部分があれば幸福な気持ちになれるし、あまり素晴らしくない部分があればいささか残念に思う。
これを読み、僕の脳裏に浮かんだのは、戦メリのテーマ曲である。映画『戦場のメリークリスマス』のテーマ曲である「Merry Christmas, Mr.Lawrence」の最初の16小節。つまり、メインのメロディ(といっていいのか)に入る前のイントロに当たる部分で、少し前から電子ピアノで練習しているのだが、僕には天上の音楽というのか、邪心を振り払って(そんなに邪心だらけではないと思うけど)心の中の汚い部分を洗い流してくれるように思える。仏(ほとけ)の調べ、という表現はおかしいかもしれないが、そう言いたいくらい美しい響きに思える。
そのような部分を、村上さんによる「音楽を聴くときは無心に耳を澄ませ、その音楽の素晴らしい部分をただ素直に聴き取り、身体(からだ)に取り入れようとする」という文章を読んだ瞬間、頭に思い浮かべた。いや、頭の中で鳴り響いたのである。