『サ道』で、ととのいたい

 タナカカツキによる漫画『サ道』を読んだ。「サ道」と書いて「サドウ」と読む。この漫画、私は以前にも読んだことがあるのだが、最近、あらためて読んだ。あらためて、と書いたが、以前に読んだものを再読したわけではない。最近、私が読んだのは以前のものの続編ということになるのだろうか(厳密な意味で、続編といえるのかどうか、現時点では私には私にはわからない)。

 7月の半ばすぎからテレビ東京の深夜枠で、この『サ道』を原作した連ドラが放送されているのだが、それについてはここではあまりふれないことにする。この連ドラも魅力的で、先週金曜日までの3回分、私はすでに観ていてハマりつつあるのだが、連ドラのことを書くと焦点がボケてしまいそうなので、連ドラについてはここまでにしておく。

 漫画『サ道』はタナカカツキらしいといえばいいのか、達者でありながらも少しゆるいタッチで描かれていて、それはタナカカツキ・テイストといってもいいかもしれないが、そのゆるさ(わかりにくいかもしれないが、少年マンガのような力強い画風とは一線を画する)がこの作品においてはモチーフであるサウナと、見事に合致しているように思う。

 サウナの楽しみ方を紹介し、「サウナを極める道=サ道(サドウ)」とでもいうように、同作では毎回サウナが出てくるのだが、その中で主人公の男(タナカカツキの分身のような人物といえるかもしれない)が、「サウナで温まる」「水風呂で体を冷やす」を繰り返すことで(ちょっと簡略化して書いているが)、最終的に快楽の頂点の状態「ととのう」という境地に達する。

 この「ととのう」というのは、サウナ用語なのか知らないが、なんとなく聞いたことがあるような気がする。昇天するというのか、究極の癒しを味わうというのは、無の境地に達するのか、どれに近いのかあるいはそれらをミックスしたものに近いのかわからないが、読んでいくうちに、この「ととのう」を体験してみたいという気になるのだ(少なくとも私の場合は)。

 恥ずかしながら(恥ずかしくはないかもしれないが)、実は私はスポーツクラブや公営プール、銭湯のサウナは体験したことがあるのだが、いわゆる、純粋な(純粋といっていいのかどうがだが)サウナへはまだ足を運んだことない。『サ道』の登場人物のように、ととのいたい。というのが、私の目下の目標だ。

 マンガを読んで、書かれていたことをやりたくなる、ということはしばしばあるが、それが野球やサッカー、バスケをはじめとするスポーツや、バンド演奏などの音楽や芸術などもいいが、『サ道』の場合はサウナというのがいい。生産性を高めるための自己啓発マンガではない、というところもいい。

 オッサンもオバサンも、そして若者も年配の人も、このマンガを読んだ人のうち何割かはきっと、サウナに行きたくなると思う。そして、サウナ経験者はサウナをより極めたいと思うのではないだろうか。

 

 


タナカカツキ
『マンガ サ道 マンガで読むサウナ道-(2)』(モーニングKC)

『マンガ サ道 マンガで読むサウナ道-(1)』(モーニングKC)

Yasu
  • Yasu
  • デザイナーを経て、クリエイティブディレクター、コピーライター、ライターに。「ベースボール」代表。広告&Web企画・制作、インタビュー構成をはじめ『深川福々』で4コマ漫画「鬼平太生半可帳」連載中。書籍企画・編集協力に『年がら年中長嶋茂雄』など。ラフスケッチ、サムネイル作成、撮影も。