堂場瞬一『身代わりの空』(「警視庁犯罪被害者支援課」シリーズ)を読んだ。いや、聴き終えた。
同作は上下巻に分かれている力作で、合わせて768ページ(上巻・下巻 各384ページ)。私は読んだのでなく、Audible(オーディブル)で聴いたので、上巻が9時間54分、下巻が9時間53分なので、合計19時間47分。
『身代わりの空』は富山空港で旅客機の墜落事故が起きたところから(冒頭から間もなく)、物語がはじまる。墜落は事故は、それとも…
主人公の村野たちは、被害者家族のケアのために富山へ向かう。大勢が犠牲になった事故の原因究明へ徐々になか、乗客の中に偽名で乗っている人がいることが判明する。なぜ、偽名に登場したのか…
殺人事件なども絡み、ものごとが複雑に入り組みながら、ストーリーは意外な方向へむかう。
同作では、堂場瞬一氏の別のシリーズ「警視庁追跡捜査係」作品の主人公である西川大和(にしかわやまと)と沖田大輝(おきただいき)が、物語の展開の流れで登場するのもいい。
ちなみに、「警視庁犯罪被害者支援課」シリーズは講談社文庫、「警視庁追跡捜査係」シリーズはハルキ文庫から出版されていて、出版社をまたいで、登場人物が交流をすることもあるのが、堂場瞬一作品の魅力のひとつでもある。c
物語に浸る、20時間弱の至福
全部で20時間というのは「長いなぁ」と思うかもしれない。私も当初はそうだった。小説1作の朗読にそんなにかかるのか、と最初は面食らったが、聴き始めてすぐ、私は自分の思い違いに気づいた。
たとえば、ビジネス書のような本であれば、少しでも早く結論を知りたいと考えることがある。それはそれで間違いではないだろう。ビジネス書とうのは、その本が言いたいポイントがわかりやすく、できるだけ簡潔に述べられていることが必要だろう。
内容ごとにある程度まとめられながらも、エピソードに具体性を持たせるため、読者に実感を抱いてもらうため、ある程度ふくらませる必要があるだろう。とはいえ、前述したようにビジネス書の中身は、基本的に簡潔であるのがいいはずだ。
小説というのは簡潔すぎてもいけない。簡潔であれば簡潔であるほどいいとうのであれば、極端な話、1ページ目に事件が起きて、2ページ目に犯人が誰であるかがわかればいいかもしれない。
だが、それでは面白くもなんともない。それに話が短すぎると、読者が登場人物に共感することもないのではないか。
小説というのは全体も大切だが、基本的に読んでいる(聴いている)最中が面白いのがいい。という意味で、聴いている20時間、ずっと楽しい(面白い)というのが理想的ではないか。事実、上下に及ぶ約20時間、私はそのプロセスを堪能することができた。
ミステリーと相性がいいAudible(オーディブル)
聴いている間、ほとんどずっとハラハラ、ドキドキできるようなミステリーはAudibleに適している分野ではないかと思う。
もちろん、ビジネス書や自己啓発書、エッセイなどを聴くのも面白いのだが、スリルあふれる場面などが何度も現れるミステリーは、Audibleに適していると思う。
Amazonが提供する、耳で楽しむエンターテインメントのサブスクサービス。月額1,500円で、20万以上の作品がほぼ聴き放題(一部、別料金の作品もあり)。初めての入会なら無料体験(2025年2月4日までなら2カ月99円)が楽しめるAudible、試してみて気に入らなければいつでも退会できるので、トライしてみてはどうだろう?
参考【書籍】