クォンタム・ファミリーズの高密度
2011-04-11
東浩紀さんの『クォンタム・ファミリーズ』(新潮社)。今頃になって読んだのだが、すごすぎる。いや、密度が濃いというべきか、書きたくてしょうがなくて書いたというのが伝わってくる。「しょうがない」という表現は適切ではないかもしれないが、なんというのだろう、書かざるを得なかった、というべきか。ちなみに、クォンタム(quantum)は「量子」という意味を持つ。
内容に関してはSF的でもあり、筒井康隆さんのような世界観を感じる部分もあるが、エンターテイメントというより、実験小説という感じか。小説の中に一部、ひとごととは思えない部分もあり、痛いところもあったが、東さんの表現欲の塊のような作品。
物語の世界は、何重(何重なのだろう)にも入りくんでいて近未来をベースに、過去も未来も、そしてもうひとつの世界も登場する。「村上春樹」の小説についての記述もあり、『世界の終わりとハードボイルドワンダーランド』や『1Q84』のような二重世界、複数の世界が同時に存在しているような世界観が描かれている。
「お前には、どうしても書きたいものはあるのか」という問いを突きつけられたような気がした。商品ありきで仕事を請け負うことが多いコピーライターには痛い。
読んだ人がみんな、僕と同じような印象を持つとは思えないが、東さんは渾身の力をこめて書いたと思える『クォンタム・ファミリーズ』。何かの刺激を求めている人に読んでほしい。
東さんは、批評への決別を示すという決意をこめて、この力作を生み出したのだろうか。思想史『思想地図β』を刊行している東さんに、批評と決別したという思いがあるのかどうかわからないが、批評家が片手間で書いた小説ではないのは確かだろう。
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